ChatGPTを案件現場でどう活用してる?
急速に進化する「ChatGPT」をはじめとする生成AI。
「ITエンジニアの仕事もAIに奪われる?」
「いや、むしろ最強のアシスタントになる?」
様々な議論が飛び交う中、私たち株式会社ボードルアのような、
ITインフラをメインとするエンジニアは、この技術とどう向き合っているのでしょうか。
私たちの「現場」は、大手通信キャリア、金融機関、公共機関など、
高いセキュリティとコンプライアンスが求められるお客様先です。
「便利そうだけど、お客様の情報を入力したら情報漏洩だ…」
その通りです。今回は、インフラエンジニアのリアルな視点から、
私たちが「鉄則」を守りながら、どのようにChatGPTを「賢く」活用しているのか、
そのリアルな方法をご紹介します。
大前提:お客様の情報は「一切」入力しない
まず、最も重要な大原則です。 私たちボードルアのエンジニアは、お客様先で業務を行うプロフェッショナルとして、以下の情報をChatGPT(外部のパブリックなAIサービス)に入力することを固く禁じられています。
- お客様のシステム構成図、設計書、パラメータシート
 - サーバーやネットワーク機器のログ、エラーメッセージ
 - お客様の社内資料、マニュアル、メール文面
 - その他、業務上知り得た一切の機密情報
 
これらは、お客様との信頼関係の根幹であり、情報漏洩を防ぐための絶対的なルールです。
「じゃあ、現場では全く使えないじゃないか?」
いいえ、そんなことはありません。 この鉄則を守りながら、自分のスキルアップと業務効率化につなげる「賢い」使い方があるのです。
活用シーン1:「壁打ち」相手としての自己学習
現場では、日々新しい技術や未知の用語に出会います。そんな時、ChatGPTは最高の「技術書」であり、「壁打ち」相手になります。
技術のキャッチアップ
- 現場で「SASE(サシー)」という単語が飛び交った。すぐさまChatGPTに「SASEとは何か、中学生でも分かるように説明して」と質問。まずは概要を掴みます。
 - 「KubernetesとDockerの違いを教えて」「ハイブリッドクラウドのメリットとデメリットを3点ずつ挙げて」など、一般的な技術知識の習得に活用します。
 
思考の整理
- 障害対応の手順を頭の中で組み立てる時、「ネットワーク障害の一般的な切り分け手順を5ステップで教えて」と質問。
 - AIの回答を「叩き台」として、自分の思考の漏れがないかチェックリストのように使います。
 - (※実際のお客様の障害内容ではなく、あくまで一般論として質問するのがポイントです)
 
活用シーン2:「翻訳・要約」ツールとしての高速インプット
ITインフラの世界、特に最先端技術の情報源は英語の公式ドキュメントであることがほとんどです。
英語の公式ドキュメント読解
- 海外ベンダーの最新リリースマニュアル(Webで公開されているもの)を読む際、難解な専門用語や長い英文をChatGPTに翻訳・要約させます。
 - 「この英文の要点を3行でまとめて」といった指示で、キャッチアップのスピードが劇的に向上します。
 
エラーコードの一次調査(一般論)
- OSやミドルウェアの一般的なエラーコード(例:HTTP 503 Service Unavailable)について、「このエラーの一般的な原因は何?」と質問します。
 - (※お客様のシステム固有のログや、IPアドレスが含まれる情報は絶対に入力しません)
 
活用シーン3:「コード生成」の学習アシスタント
今やインフラもコードで管理する「IaC (Infrastructure as Code)」が当たり前。TerraformやAnsible、シェルスクリプトの学習にもChatGPTは役立ちます。
IaCのサンプルコード生成
- 「TerraformでAWSのVPC(仮想ネットワーク)を構築する基本的なHCLコードを書いて」
 - 「AnsibleでNginxをインストールするPlaybookのサンプルを教えて」
 - 特定のIPアドレスや固有パラメータは一切含めず、あくまで「雛形」「サンプルコード」として生成させ、それを自分のローカル学習環境で動かしながら学びます。
 
シェルスクリプトの作成補助
- 「ログファイル(サンプル)から"Error"という単語が含まれる行だけを抽出するシェルスクリプトを書いて」
 - 定型的な処理の書き方を素早く学び、検証作業の効率化に活かしています。
 
一歩先の活用:お客様専用の「セキュアなAI」
最近では、お客様自身がセキュリティを担保したクローズドな環境(例:Azure OpenAI Serviceなど)で、生成AI基盤を導入するケースも増え始めています。
私たちボードルアのエンジニアは、そうしたお客様専用AI基盤の「構築」や「運用」に、インフラエンジニアとして携わる機会も出てきました。 この場合、お客様の厳格なルールのもと、許可された範囲内でお客様のデータを活用した、より高度なAI活用(社内マニュアルの検索、障害ログの一次分析など)を支援することになります。
まとめ:AIは「使う」ものであり、AIに「使われない」ために
ChatGPTは魔法の杖ではありません。 重要なのは、私たちエンジニアが、
- コンプライアンスを守る「高い倫理観とリテラシー」
 - AIの回答を鵜呑みにしない「技術的な裏付け(ファクトチェック)」
 
この両輪を持つことです。
私たちボードルアは、エンジニアとしてお客様の信頼を第一に守りつつ、最新技術を積極的に学び、活用する姿勢を大切にしています。社内教育制度「ボードルアカレッジ」でも、こうした最新技術の動向や、AI時代に求められるリテラシー教育を常に取り入れています。
あなたも、セキュリティ意識と技術的好奇心を両立させ、最先端の現場で賢く技術を活用するエンジニアを、私たちと一緒に目指しませんか?